
結論:生成AIの社内ルールは、「①使ってよいツール ②入れてはいけない情報 ③確認する人 ④出力の使い方 ⑤記録の残し方 ⑥困ったときの相談先 ⑦見直しの時期」の7項目を、A4 1枚にまとめれば、まずは十分です。長い規程を作るより、「全員が読んで守れる短さ」で始め、使いながら見直すのが、中小企業には向いています。
「社員がChatGPTなどの生成AIを使っているようだが、何をルールにすればいいか分からない」。経営者や総務の担当者から、よく聞くお悩みです。ルールがないと不安で使えず、かといって細かすぎるルールは、誰も読みません。このコラムでは、中小企業が最低限決めておきたい7項目と、情報の線引きの考え方、守ってもらうための工夫を、順番に説明します。
なぜ、中小企業にも、生成AIの社内ルールが必要ですか?
ルールがないまま使われると、次のようなことが起こりやすくなります。
- お客様の名前や、見積金額を、そのままAIに入力してしまう
- AIの回答を、そのまま信じて、誤った内容をお客様に出してしまう
- 担当者ごとに使い方が違い、成果物の品質にばらつきが出る
- 「何がだめなのか分からない」ため、不安で、誰も使わなくなる
- これから入ってくる若い世代はAIを身近に使ってきた世代の為、ルール制定していないと独自のルールで活用してしまう。
ルールの目的は、使うことを禁止することではありません。「安心して使えるように、線を引くこと」です。
ルールを作る前に、まず何を決めればよいですか?
最初に決めるのは、「どんな情報なら、AIに入れてよいか」です。まずは情報を、次の3段階に分けると、判断しやすくなります。

| 段階 | 考え方 | 例 |
|---|---|---|
| ○ 入れてよい | すでに公開されている、または、誰のことか特定できない | 自社のホームページに載せている内容/一般的な文章の言い換え・要約 |
| △ 加工すれば可 | 名前や数字を伏せれば、使える | 社名を「A社」に置き換える/金額や日付をぼかす |
| × 入れない | 漏れると、お客様や会社に影響が出る | お客様・従業員の個人情報/未公開の取引条件・見積金額/パスワード/契約書の全文 |
迷ったときは、いちばん厳しい側に倒して、「迷ったら入れない」を合言葉にします。
ルールに入れる7項目は、何ですか?
次の7項目が決まっていれば、A4 1枚のルールとして、使い始められます。

| 項目 | 決めること | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 1. 使ってよいツール | 会社として認めるAIサービスの範囲 | 会社が指定したAIサービスだけを使う。個人の無料アカウントでの業務利用は、しない |
| 2. 入れてはいけない情報 | 3段階の線引き | お客様・従業員の個人情報、未公開の取引条件、パスワードは入力しない |
| 3. 確認する人 | お客様へ出す前に、内容を見る担当 | お客様に出す文書は、AIが作ったものも、担当者と上長が確認する |
| 4. 出力の使い方 | そのまま使ってよい範囲 | 事実・数字・固有名詞・法律に関わる内容は、必ず元の資料で確認する |
| 5. 記録の残し方 | 何に使ったかのメモ | 用途と日付を、共有の表に1行で残す |
| 6. 困ったときの相談先 | 迷ったときの窓口 | 迷ったら、総務の○○さんに聞く。聞いたことで、責められることはない |
| 7. 見直しの時期 | ルールを更新するタイミング | 3か月後に見直し、その後は半年ごとに見直す |
とくに大切なのは、「2. 入れてはいけない情報」と、「6. 困ったときの相談先」です。前者は事故を防ぎ、後者は「聞いてよい空気」を作ります。
ルールを守ってもらうには、どうすればよいですか?
ルールは、作ることより、守られることが大切です。次の5つを意識すると、定着しやすくなります。
- 短くする:A4 1枚で、3分以内に読める長さにします。
- 具体例をつける:「これはOK」「これはだめ」を、3つずつ書きます。
- 経営者が、最初に使って見せる:上の人が使う姿を見せると、使いやすくなります。
- 聞きやすくする:失敗や、迷ったことを報告した人を、責めないと決めます。
- 月に1回、短く振り返る:5分でもよいので、困ったことを出し合います。
- まずは一気に進めない:よくある失敗がこれです。まずは簡単なことからルールを作っていき、少しずつ定着させながら、進めないと失敗します。
ツール側では、どんな設定を確認すればよいですか?
ルールに加えて、使うツール側の設定も確認します。設定の画面名や内容は、サービスによって違い、変わることもあるため、必ず最新の公式の説明で確認してください。
- 入力した内容が、AIの学習に使われるかどうかの設定
- 履歴や、保存の設定
- 共有リンクの公開範囲(誰でも見られる状態になっていないか)
- アカウント管理(1つのアカウントを複数人で使い回さない/退職した人のアカウントを止める)
- 無料プランと有料プランの違い(データの扱いが違う場合があるため、利用規約で確認する)
AIツールの設定だけでなく、パソコンやアカウントそのものを守る備えも欠かせません。侵入されても被害を小さく抑える考え方は、サイバー攻撃に備える「入られても大丈夫」な体制の作り方で解説しています。
生成AIのルール作りで、よくある失敗は、何ですか?
- 長すぎる規程を作る:誰も読まなくなります。A4 1枚から始めます。
- 禁止ばかりを並べる:使われなくなります。「こう使えばよい」も、あわせて書きます。
- 作って終わりにする:ツールも使い方も、変わります。3か月後に、必ず見直します。
- ルールだけ作り、ツールの設定を確認しない:設定が原因で、情報が残ったり、共有されたりすることがあります。
よくある質問
Q. ルールがなくても、生成AIを使ってよいですか?
使うこと自体は可能ですが、「入れてはいけない情報」だけは、使い始める前に決めておくことをおすすめします。まずは、「個人情報・取引先の秘密・パスワードは入れない」の1行からで構いません。
Q. 個人情報は、絶対に入れてはいけませんか?
原則として、入れない運用が安全です。どうしても扱う必要がある場合は、サービスの利用規約や設定の確認、本人への説明など、法律に関わる確認が必要になります。この記事は一般的な考え方を紹介するもので、法的な判断ではありません。個別の判断は、弁護士などの専門家にご相談ください。
Q. 取引先から、「AIを使っていますか」と聞かれたら、どう答えればよいですか?
「どの業務に使い、何を入力しないか」を答えられるように、ルールを文章にしておきます。A4 1枚のルールが、そのまま説明の資料になります。
Q. 社員が、個人のアカウントで、勝手に使っているようです。どうすればよいですか?
禁止するだけでは、隠れて使われやすくなります。まず、現状を責めずに聞き取り、会社として使えるツールと、使い方を用意します。そのうえで、入れてはいけない情報を、はっきり伝えます。
Q. ルールは、誰が作ればよいですか?
経営者または管理担当者と、実際にAIを使う担当者の、2人以上で作るのがおすすめです。現場の使い方を知る人が入らないと、実態に合わず、守られにくくなります。
Q. 専門家に頼んだほうがよいですか?
最初のルールは、自社で作れます。ただし、取引先から文書での提出を求められている場合や、個人情報を多く扱う場合、業種ごとの決まりがある場合は、専門家にも相談してください。SaCでも、ルール作りのご相談をお受けしています。初回のご相談は、無料です。
まとめ:まずは、A4 1枚から始めましょう
生成AIの社内ルールは、「使ってよいツール」「入れてはいけない情報」「確認する人」「出力の使い方」「記録の残し方」「困ったときの相談先」「見直しの時期」の7項目を、A4 1枚にまとめることから始められます。完璧を目指さず、守れる短さで始め、3か月後に見直しましょう。
ルールを決めたあと、最初の一歩として試す題材には、Excelの関数・集計をAIに頼む方法が向いています。
AI導入全体の進め方は、中小企業のAI導入の進め方|失敗しない5ステップでも解説しています。情報漏えいやサイバー攻撃への備えは、サイバー攻撃に備える「入られても大丈夫」な体制の作り方もあわせてご覧ください。SaCでは、現場の業務を一緒に整理し、ルール作りから定着まで伴走するAIコンサルティングと、社員向けのAIセミナーをご用意しています。まずは、お問い合わせから、お気軽にご相談ください。